2011.09.15 : 平成23年第3回定例会(第3日目)

【20番(中島資浩議員)】 まず初めに、前橋の魅力を生かしたまちづくりについてお尋ねいたします。
 その第1は、前橋遺産の創設についてであります。昨年暮れ、旧麻屋ビルの解体が決定いたしましたが、市内外からその保存と利活用を強く望む多くの声が寄せられたにもかかわらず解体されたことは、まことに残念であります。振り返りますと、私が市議会議員となった10年前からこれまでの間、多くの歴史遺産が失われております。本市出身の詩人、伊藤信吉氏が生前こよなく愛していたと言われる若宮町のれんが蔵、県民会館近くにあった前橋を代表するれんが倉庫がなくなり、明治22年につくられ、前橋が生んだ世界的詩人、萩原朔太郎の詩のモチーフともなった前橋刑務所のれんが塀も一部解体されました。また、萩原朔太郎の生家跡にはマンションが建設され、北関東初の百貨店として、また建築学上においても当時の日本を代表する建築物の一つであった旧麻屋ビルも解体されました。いずれも前橋に生まれ育った市民にとって、世代を超え、なれ親しんできた前橋の原風景でありました。一方、現存するものでは広瀬川や前橋駅前から県庁まで続くケヤキ並木、さらにはるなぱあくのもくば館や住吉町の旧安田銀行担保倉庫、前橋駅前の上毛倉庫等々、前橋の魅力として後世に伝え、残すべきであると考えます。そこで、前橋の個性、前橋らしさを後世に伝え、また都市観光を推進していくため、世界遺産の前橋版、前橋遺産を選定してはいかがかと考えます。世界遺産に倣い、市民の意見をもとに遺跡、景観、自然など市民が共有べき顕著な普遍的価値を持つ資産を前橋遺産として選定し、将来にわたって保存、まちづくりに生かすべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

【政策部長(板井稔)】 前橋遺産の創設についてでございますが、遺跡、建造物、景観などを初めとした多くの前橋らしさというものを後世に残していくことは、前橋の個性を形成する上でも重要なことだと考えております。現在貴重な文化財等については、文化財保護法に基づきまして国や地方公共団体により保存及び活用がされております。ご提案の前橋遺産の創設に当たっては、こうした既存の制度と重複する場面がある一方で、自然景観などにつきましては客観的な選定基準を定めるのは困難な場合もあるものと考えております。また、所有者の価値観や意向を尊重していくことも必要であるなど、課題も多いと考えておりますので、現段階では慎重に対応していく必要があると考えております。

【20番(中島資浩議員)】 これ以上前橋の魅力、前橋らしさを失うことのないよう、公有化、文化財の指定、景観の保護等さまざまな観点から前向きな取り組みをお願いいたします。
 次に、公的補助制度の創設についてお伺いいたします。歴史的建造物の保存と活用には、現在の建築基準法や消防法等の基準を満たすために多額の費用を要し、これが保存と活用につながらず、解体される大きな要因の一つとなっている側面もあるように思います。そこで、歴史的建造物を保存、活用し、前橋の個性を生かした魅力あるまちづくりを進めるためにも、一定の基準を満たすものについては改修工事等の補助制度を設けるなど、何らかの公的支援が必要不可欠と思いますが、ご所見をお伺いいたします。

【政策部長(板井稔)】 歴史的建造物等に対します市単独の新たな公的補助制度の創設ということでございます。歴史的建造物の保存や個人管理者の負担軽減などの観点からは有効な施策であると考えられます。しかし、本市においては既に文化財保護法に基づく指定文化財制度により、文化財の指定を受けた建造物等に対して支援を実施しているところでございます。また、個人所有の文化財等に対しまして公的支援を実施する場合には、多くの市民が納得できる明確な基準づくりが必要だというふうにも考えておりますし、文化財保護や都市景観など、既存制度の活用や国、県の制度との整合なども考慮する必要があることから、大変難しいものと考えております。

【20番(中島資浩議員)】 たとえ個人の所有物であっても歴史的、あるいは学術的な見地から成る前橋市民共有の財産的価値を有するものには公的補助制度の創設について、ぜひご検討をお願いしたいと思います。
 続きまして、富岡製糸場との連携についてお尋ねいたします。ご案内のとおり、かつて本市は糸のまちとして大変栄えました。現在富岡製糸場と絹産業遺産群が世界遺産の暫定リストに登録されておりますけれども、富岡製糸場とのかかわりも大変深いと思われます。しかしながら、本市はこの遺産群に一つも加わっていないということでございまして、それはなぜなのか、またその理由についてお尋ねしたいと思います。

【管理部長(田中靖幸)】 群馬県で進めております世界遺産暫定資産候補には、富岡製糸場と絹産業遺産群、日本産業革命の原点として現在10件の資産が上げられていますが、いずれも国の史跡、重要文化財、天然記念物として指定、あるいはその候補となっているものでございます。残念ながら本市にはそれに該当する物件が残されておりません。あるいは、今後国の指定候補になり得るものが出てくるかもしれませんが、現在まだその段階にないということでございます。

【20番(中島資浩議員)】 歴史的に見て、本市は当然富岡製糸場と絹産業遺産群に加わってしかるべきというふうに考えております。本市は、戦禍をこうむった中で、必ずしも十分と言えないまでも、それに値する物件はまだまだあるというふうに思っております。ぜひ粘り強く前向きな取り組みをお願いいたします。
 次に、旧大竹酒造れんが倉庫の利活用についてお尋ねいたします。本物件は、平成18年5月、都市景観推進事業用不動産として前橋土地開発公社で先行取得したものと認識しております。その後利活用に向けてさまざまな検討がなされたということでございますけれども、まことに残念ながらいまだ具体的な取り組みには至っておりません。そこで、まず取得後のこれまでの取り組み状況についてお伺いいたします。

【都市計画部長(塚田昌志)】 旧大竹酒造れんが蔵の取得から現在までに実施した取り組みについてでございますが、県内事例の視察や文化財保護課による文化財調査、前橋工科大学地域連携推進センターによる耐震診断、さらに庁内ワーキンググループによる利活用の検討などを実施してまいりました。また、敷地を利用した暫定的な活用を地元自治会に働きかけ、地域の皆様による七夕まつりや前橋まつりにあわせた地域住民のお祭りなどに活用していただいております。このような取り組みの中で、昨年度国庫補助事業である景観形成総合支援事業を活用し、土地の取得及びれんが蔵の耐震改修を行う方針決定をいたしましたが、国の事業仕分けによりこの景観形成総合支援事業が打ち切りとなり、事業化には至っていないという状況でございます。

【20番(中島資浩議員)】 先刻述べましたとおり、これまで本市では多くの歴史的建造物が失われてまいりました。私は、本市の個性、魅力を生かしたまちづくりにより、他都市との差別化が図られると同時に、必ずや都市間競争に耐え、市民が誇りを持てるまちづくりにつながると確信しておりまして、本市の発展にも寄与するものと思います。ぜひ市として旧大竹酒造れんが倉庫の魅力ある利活用に積極的に取り組んでいただきまして、それがほかの歴史的建造物の保存と活用につながるよう期待しております。よろしくお願いいたします。
 次に、明寿大学についてお尋ねをいたします。中央公民館で行われております本大学は、非常に人気の高い事業であると伺っております。そこで、まず明寿大学の事業概要についてお伺いいたします。

【指導部長(青木博)】 明寿大学でございますけれども、中央公民館が主催いたします高齢者教室といたしまして、自己実現の場、地域活動の指導者養成の場として昭和46年に設置したものでございます。対象は、市内在住の60歳以上の方であり、各学年とも定員110名の4年制の大学形式で、約400名の方が在籍しております。第2、第4月曜日を基本的な学習日としておりまして、午前中には公民館のホールに全員が集まり、さまざまな分野について講演を聞きます。また、午後は書道、絵画、ダンスなど全部で11種類のクラブに分かれて活動を行っているところであります。また、月曜日以外にも希望者のみの課外クラブといたしまして、パソコン、カラオケなどのクラブ活動もございます。また、文化祭への参加ですとか館外研修など1年間を通じてさまざまな学習を行っております。ご指摘ありましたように、近年大変好評をいただいておりまして、平成23年度の入学希望者は定員の110名に対しまして270名の方からのご応募をいただいております。

【20番(中島資浩議員)】 間もなく40周年を迎えるということでございまして、長い歴史と伝統と誇る事業でございます。その人気度は、中央公民館が現在の前橋プラザ元気21に移転して以来倍率がそれまでの約1.7倍から約2.7倍に上昇したと。入学希望者が急増していることからもうかがい知ることができますが、中心市街地の活性化に取り組む中でより多くの入学希望者の受け入れについて前向きに取り組むべきというふうに考えております。そこで、まずより多くの入学希望者を受け入れられるよう、受け皿整備とさらなる充実についてお考えをお聞かせください。

【指導部長(青木博)】 受け皿の整備についてでございますけれども、中央公民館のホール自体が456名という定員が消防法で定められております。そのために学年ごとの定員を大幅にふやすということができない状況がございます。また、学年ごとに定期的なカリキュラムを組むことを考えた場合に、110人が一度に受講できるのはホールしかございません。したがって、主な活動の場となるこのホールの稼働率が現在午前、午後、夜間を含めて70%と非常に高くなっておりますので、一般の利用の方々に大きな影響が出てしまうのが現状であります。これまでも可能な範囲で明寿大学の内容を充実してまいり、その結果が現在の応募状況につながっているというふうに考えております。なお、選に漏れた方につきましては、過去2回応募から漏れた場合には優先的に入学できるなどの対応や中央公民館で活動しております200を超える自主学習グループへの入会を紹介するなど、受講者の身になった対応をしておりますが、今後も事業の一層の充実を図ってまいりたいと考えております。

【20番(中島資浩議員)】 卒業生による同窓会もあるようでございます。明寿大学は、中心市街地の再活性化にもつながる可能性を秘めた発展性のある事業であるというふうに考えております。ハード面での難しさもあるようでございますけれども、さらなる事業の充実、発展のご検討をお願いいたします。
 次に、校舎のあり方についてお尋ねいたします。これまでの校舎は鉄筋コンクリート造で、どこか冷たさを感じる、潤いのない無機質な印象を与えるものでございました。しかし、予算的な問題もあるかと思いますけれども、子供たちが1日の多くの時間を過ごす校舎を木材や土壁を多用したぬくもりのある魅力的な校舎にできないものかというふうに考えております。間もなくみずき中学校の建設に着手するということでもありますけれども、今後校舎の建てかえに当たって林業振興にも十分配慮し、県産材を多用する等、子供に優しく環境にも配慮した校舎にしてみてはと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

【管理部長(田中靖幸)】 魅力ある校舎整備についてでございますが、文部科学省では従来から学校施設における木材利用の促進に取り組んできており、また昨年平成22年には公共建築物等における木材利用の促進に関する法律が施行され、学校施設等公共施設でのより一層の木材利用が図られているところでございます。本市では、これまで学校施設の建設、改修時に木材など天然素材やリサイクル建材などをできる限り利用し、教育環境の向上と環境負荷の軽減に努めてまいりました。特に昨年度完成した宮城幼稚園では、腰壁に県産材の杉を利用し、床材、建具などにも木材を利用いたしました。また、みずき中学校でも共用のホールや廊下の壁などを木材の仕上げとしております。今後もできる限り県産木材の利用を考慮するなど、教育環境の向上と環境負荷の軽減を図ってまいりたいと考えております。

【20番(中島資浩議員)】 ご答弁によりますと、昨年平成22年には公共建築物等における木材利用の促進に関する法律というものが施行されたということでございますけれども、ぜひ今後保育所等の建設、さらにはほかの公共施設の建設に当たっても同様な取り組みをお願いいたします。
 次に、旧東芝機器跡地についてお尋ねいたします。新前橋駅にほど近い東芝機器が本年3月末をもって閉鎖となりました。本市はもとより、関連企業等に与える影響は大きく、まことに残念なことであります。しかし、場所的には関越道の前橋インターチェンジも近く、交通の拠点性もある可能性の高い位置にあります。これだけの立地条件が整ったところに、しかもこれだけまとまった土地があるということは大変貴重でありまして、今後の前橋の発展を左右する大変重要な場所であると言えます。現在工場の解体工事も進んでおりますけれども、清算の発表からこれまでの状況をどのように把握されているのかお伺いいたします。

【商工観光部長(横山隆則)】 新前橋の東芝機器についてでございますが、昨年9月の同社清算発表後、12月末で生産活動を終了いたしまして、本年3月末には製品の出荷等も終了して事業を終息しております。しかし、主要部門でありますカップ自販機と給茶機につきましてはそれぞれ事業譲渡され、いずれも市内の事業所において事業が継続されております。同社は、現在清算に向けての解体工事を進めておりますが、跡地の売却につきましては現在詰めの段階にあると聞いております。

【20番(中島資浩議員)】 この場所は、現在は民間の所有でございますけれども、今後の新前橋駅周辺のまちづくりにおいて多大な影響を与える可能性があります。そこで、本市としても早い段階から所有者との連携を図ることがぜひ必要と考えておりますけれども、ご所見をお伺いいたします。

【商工観光部長(横山隆則)】 企業との連携ということでございますが、売却先につきましては現在詰めの段階ということでございますので、売却先に関する情報が得られました後に市としての対応につきましていろいろ検討してまいりたいと考えております。

【20番(中島資浩議員)】 本市の都市計画マスタープランでもこの新前橋周辺は地域核として位置づけられていることはご案内のとおりでございます。新たな所有者との速やかな連携を図るためにも、現在の所有者である東芝機器とも綿密な連携を図っていただきますようお願いいたします。
 残念ながら時間が残されておりません。もう一問予定しておりますけれども、こちらにつきましては割愛させていただきます。以上で質問を終わります。ありがとうございました。


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