2003.06.09 : 平成15年第2回定例会

【2番(中島資浩議員)】 総括質問をさせていただきます。

 初めに、近代化遺産についてお尋ねいたします。過日、糸のまちの象徴消えるとのタイトルで、若宮町にあるれんがづくりの新勢館製糸場倉庫が老朽化により近く取り壊されるとの新聞報道がありました。その記事によりますと、この倉庫は建築後約100年以上経過していると推定され、当時の面影を残す数少ない建築物とのことであります。そこで、こういった赤れんが建築物を初めとする市内に現存する近代化遺産について調査研究され、その実態を把握されているか、お伺いいたします。

 次に、選挙の投票率についてお尋ねいたします。昨今あらゆる選挙のたびに投票率が関心を持たれ、その低下が問題視されておりますことはご案内のとおりであります。さて、本年4月に統一地方選挙が行われたところですが、群馬県議会議員選挙における本市の投票率は前回より2.04%下がり52.61%でありました。すなわち、有権者のほぼ半数が投票権を行使していないという結果となりました。群馬県民の代表として選ばれる議員がおよそ半分の有権者によって決められていることは大変憂慮すべき問題と言わざるを得ません。こういった実態を踏まえ、当然選挙管理委員会としても投票率のアップに向けていろいろとご苦労されていることと思います。そこで、これまで投票率のアップに向け、どのような取り組みをされてこられたか、さらには集計分析の結果、投票行動について、例えば世代別等でどのような傾向が見られるか、お伺いいたします。

 次に、中心市街地の諸問題について何点かお尋ねいたします。第1に、市有地の活用についてであります。中心市街地には8番街、消防署、旧協和銀行跡地、旧勢多会館跡地等それぞれある程度まとまった市有地があります。ご案内のとおり、中心地が衰退傾向にあり、民間の進出が余り期待できない中で、行政による市有地の活用が中心市街地再活性化のかぎを握っていると言っても過言ではありません。そこで、今後これら市有地についてどのような活用を図っていくお考えか、ご所見をお伺いいたします。

 第2に、憩いの場としての空間づくりであります。中心市街地は、公共交通の要衝でもあり、お年寄りやハンディのある方々、それに子供たちなど生活弱者と言われる方々にとって大変行きやすい場所であり、同時に安心して歩ける空間です。また、これからの中心市街地のあり方を考えるとき、郊外大型店にはないプラスアルファの魅力を付加し、これを強くアピールしていく必要があると考えます。中心市街地の個性の一つは、河畔に緑あふれ、水量豊かな広瀬川や公園的に整備された緑豊かな馬場川通りであり、この二つのスポットは大変おしゃれで、歩いていて楽しい、心いやされる場所であります。こういった中心市街地の安らぎの求められる市民の憩いの場としての空間づくりも大変重要な要素であると考えます。そこで、緑豊かで潤いとゆとりのある魅力的な空間を中心市街地にふやすためにも、Qのまちエリア内の各通りにおいて馬場川通りと同様なさらなる緑化の推進が必要であると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

 第3に、合併との関係であります。大胡、粕川、宮城との合併に向けた協議の場は、任意の協議会から法定の協議会に移行し、いよいよ大詰めの段階を迎えつつある感がいたします。今後法定協議会の最も重要な案件の一つである新市建設計画の策定に向けた具体的な議論も行われることと思います。そこで、合併後の新市の中で現在の中心市街地はどのように位置づけられるのか、また新市建設計画の中ではどうか、ご所見をお伺いいたします。

 最後に、SARS問題についてお尋ねいたします。SARSについては、現時点では我が国での発症例が見られないものの、世界的に見て当面完全な終息は考えにくい状況にあります。国際交流、企業の海外進出、海外への留学、海外旅行が盛んに行われるなどの時代的背景にあって、本市も常にその危険と隣り合わせていると言っても過言ではありません。したがって、この問題については本市においても十分な対策が必要と思われます。そこで、仮に本市からSARSの疑いのある方が発見された場合、どのような対応をとることになっているのか、お伺いをいたしまして、第1質問を終わります。

【管理部長(阿部明雄)】 近代遺産についてですが、平成2年度から2カ年をかけて群馬県内の近代の建造物等の調査が行われ、本市では70件を超える建造物の調査を実施いたしました。これをもとに、平成6年度には住吉町二丁目の旧安田銀行担保倉庫を含む16件を対象とした調査を実施し、実態把握を行いました。現在本市には建造物の指定文化財として臨江閣初め4件があります。また、このほか平成8年度に導入されました国の文化財登録制度により、昭和初期に建てられた群馬県庁昭和庁舎、前橋市水道資料館等4件が登録され、その後も萩原家住宅、前橋カトリック教会聖堂なども登録をされまして、8件の国登録有形文化財がございます。

【総務部長(齋藤亨光)】 投票率の関係でありますが、まず本市における投票率につきましては全国的傾向と同様に各種選挙で投票率が低下していく傾向にありますので、選挙の際には市民が投票総参加となるよう、本市の明るい選挙推進協議会とも連携をいたしまして街頭啓発や広報車による投票日の周知などを行っております。また、選挙が行われない時期には、市のリサイクルまつりなど各種イベント会場に出向き、明るく正しい選挙の推進活動を行っております。

 次に、年代別の投票率ですが、さきの参議院議員通常選挙における年代別投票調べがございます。これによりますと20歳代が約25%、30歳代40%、40歳代61%、50歳代59%、60歳代74%、70歳代が75%、80歳代48%と、年代によって格差が見られます。さらに、20歳代のうち、20歳から25歳までの投票率を見ますと21%となっておりまして、年齢が若い有権者ほど投票率が低い傾向が見られます。

【商工部長(中原惠治)】 中心市街地における市有地の活用についてでありますが、8番街地区等については地区全体の活性化に十分波及効果を及ぼす用地であり、また各商店街の活性化対策に効果的な場所であることなどから、中心市街地活性化基本計画では活性化拠点地区として位置づけております。現在TMOなどで整備方針をもとに事業内容を検討しているところであります。

 次に、憩いの場としての空間づくりについてでありますが、これまで8番街区の中央広場の整備や7番街区の遊歩道が整備されました。今後も中心市街地には広瀬川や馬場川などの自然が多くありますので、引き続き水と緑と詩のまちにふさわしい都市形成を考えていきたいと思っております。

 次に、合併後の新市の中での中心市街地の位置づけにつきましては、現在新市建設計画を検討中でありますが、中心商店街は県都としての商店街にふさわしい魅力あるまちづくりとして位置づけ、主要事業としては中心市街地活性化基本計画にある事業を実施することで検討しております。

【保健福祉部長(中野浩)】 SARS問題についてでありますが、仮にSARSの疑いのある人が出現した場合の対応につきましては、県のSARS対策行動計画に示された疑い例、可能性例、確定例の3区分に応じた扱いとなります。具体的には、感染拡大の防止を重点にした指定病院への誘導と受診を行い、疑い例と診断された場合には経過観察と自宅待機を含めた生活指導を、可能性例あるいは確定例と診断された場合には隔離入院となります。なお、SARS感染が心配な場合は、6月1日号の広報にも記載してありますが、直接医療機関へ訪問受診することなく、二次感染の未然防止等の観点から、かかりつけの医師、あるいは保健福祉事務所、市役所等へ電話相談していただくことをお願いしております。

【2番(中島資浩議員)】 ありがとうございました。第2質問をさせていただきますけども、第1質問の中で中心市街地の諸問題の中で、市有地の活用についての消防署跡地、あと旧協和銀行跡地の活用についての答弁がなかったように思われましたので、もし後でお願いできればと思います。

 では初めに、近代化遺産について、さらにお尋ねいたします。本市では、平成2年から3年にかけてと平成6年の2回、調査、実態把握を行ったとのことでありますが、その後の追跡調査、実態把握はされていないようであります。そういった中、まことに残念ながら、これまでにいつの間にか失われていった近代化遺産もあるようです。そこで、行政としても、一つ、本市の近代化遺産をもう一度洗い直す、二つ、その所有者に対して、これらを取り壊し、あるいは改修の際には協議を願うなどの連携体制を整える、三つとして文化財としての視点だけでなく、景観や本市の歴史等幅広い視点を含め、本市の貴重な財産として相当な価値が見出されるものについては、これを後世に残し、伝えていくべく、行政としての支援体制を整えるなど、何らかの対応が必要と思いますが、ご所見をお伺いいたします。

 また、近代化遺産の保存に当たっては市民の理解も必要です。そこで、近代化遺産の掘り起こしや保存の検討に当たっては学識経験者や市民参加による検討組織を設けての取り組みが望ましいと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

 次に、投票率についてさらにお尋ねいたします。7月には群馬県知事選挙を控え、また平成16年2月には本市市長選挙も予定されております。投票率を上げるためには、従来型の投票運動では既に限界があるように感じられます。そこで、今後投票率のアップに向けてどのような考えのもとで、どのような取り組みを行っていくお考えか、お伺いいたします。

 また、投票率のアップを図るための一つのツールとして、候補者の政策や考え方、あるいは候補者間の政策や考え方の違いをより多くの有権者に広く伝えることのできる選挙公報があります。一方、地方分権の進展とともに地方の役割、責任が大変大きくなる中で、今後ますます政策重視型の選挙が求められます。そういった背景をもとに、本県においてもこれまでに館林、高崎、藤岡、沼田、伊勢崎の5市において既に選挙公報発行のための条例制定が行われ、過日行われました群馬県議会議員選挙においても初めて選挙公報が発行されており、本市においても選挙公報発行に向けた条例制定が喫緊の課題となっております。そこで、本市における選挙公報の発行に向けた条例制定についての基本的考え方、さらには条例化をお考えだとすれば、その時期についてお伺いいたします。

 さらに、投票率のアップを図るためには、政治離れの進む若年層の投票率を上げることが必須条件となります。しかし、現状からいたしますと、そのためには抜本的な取り組みが必要であると思われます。そこで、特に若年層の投票率アップを図るために今後どのように取り組まれるお考えか、お伺いいたします。

 また、例えば各界の若手リーダーに加え、大学生や専門学校生等の若者を中心とする市民参加型の投票率アップのための検討組織を設けてみてはと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

 次に、中心市街地の諸問題について、さらにお尋ねいたします。第1に、公共施設の設置についてであります。行政としてできる中心市街地再活性化策にはおのずと限界がありますが、中心市街地における公共施設の設置は、中心市街地に人を呼び込むための仕掛けづくりとして行政ができる中心市街地再活性化策の一つであります。そこで、中心市街地における公共施設の設置を含め、行政としてできる中心市街地再活性化策をどのようにお考えか、ご所見をお伺いいたします。

 また、平成14年第1回定例会の総括質問において、8番街の活用として中央公民館や図書館、さらにはNPOやボランティア活動を支援する市民活動サポートセンターや市の窓口業務を行う出先機関等を含む市民プラザ的な公共複合施設の設置を提案させていただきましたが、残念ながらその後8番街の活用につきましては進展を見ていないようであります。しかし、時間外、あるいは休日対応可能な窓口業務のできる市民サービスセンターや市民活動サポートセンターの設置は、中心市街地の空き店舗等を活用することで十分対応可能であります。そこで、これらの設置に対するご所見についてお伺いいたします。

 第2に、合併との関係についてであります。現下の経済情勢や本市の財政状況にかんがみますと、公共複合施設の設置に関しましては大変厳しい状況にあるということは理解できます。しかし、さきに述べましたとおり、中心市街地が余りにも衰退傾向にあり、民間の進出が思うように期待できない中にあっては、行政が中心市街地再活性化のかぎを握っていると言わざるを得ません。そこで、中心市街地における公共複合施設の設置に当たっては合併特例債を活用した事業を検討することも一考に値すると考えますが、ご所見をお伺いいたしまして、第2質問を終わります。

【管理部長(阿部明雄)】 近代化遺産についてですが、平成2年度からの調査でリストアップされた建造物は、調査後年月も経過していることから、現在の状況を確認する必要があると考えています。また、所有者に対しては、保存について理解を求めてまいります。

 次に、行政の支援体制ですが、重要なものにつきましては指定文化財あるいは国登録有形文化財として申請を進める中で検討してまいります。近代化遺産の多くは現在も使用されており、これをどのように保存していくかは大きな課題です。市民が近代化遺産を身近な文化財として認知し、これらを守っていこうとする意識の醸成を図る中で、理解や協力を得て初めて保存を可能にしていくものと考えます。また、近代化遺産の検討の組織につきましては、本市の文化財調査委員の意見を聞きながら進めてまいります。

【総務部長(齋藤亨光)】 県知事選挙及び前橋市長選挙における投票率アップに向けての活動ということでありますが、投票総参加を合い言葉に、前橋市明るい選挙推進協議会の皆様と一緒になりまして街頭啓発や事業所訪問などを行い、一人でも多く投票に行っていただけるよう活動をしてまいりたいと考えております。

 また、市議会議員選挙及び市長選挙における選挙公報の発行に伴う条例の制定につきましては、検討を進めておるところであります。

 次に、選挙啓発への抜本的な取り組みでありますが、選挙啓発に特効薬はないと言われ、全国の選挙関係者は投票率アップに効果がある活動や行動などを模索、研究をしております。投票率アップのために市民参加型の検討組織を設けたらとのお話でありますが、本市の明るい選挙推進協議会には若年層の代表といたしまして、既に前橋工科大など市内の大学の学生さんが推進委員として加入をいただいており、事業計画や活動に活躍をしております。この若い方々の発想や活動がこれからの投票率アップの起爆剤となることに期待をしているところであります。

【商工部長(中原惠治)】 中心市街地の再活性化策についてでございますが、中心商店街の活性化につきましては、平成11年度に前橋市中心市街地活性化基本計画が策定されまして、またこの基本計画を受けましてTMO構想がまとまっておりますので、今後もTMO構想などに基づいて事業を推進していきたいと考えております。

 次に、公共施設の設置や空き店舗などを利用した窓口業務のできる市民サービスセンターなどの開設につきましては、今後必要があれば庁内で検討される課題になるかと思っております。

【市長公室長(宮地英征)】 先ほど中心市街地の市有地の活用のところで、消防庁舎等という具体名がなかったというふうに思ったんで、立たなかったんですが、第2でありましたので、お答えをいたします。

 消防庁舎跡地と旧協和銀行跡地の活用ですけれども、この場所は官庁街と中心商業地を結ぶ重要な位置にあります。そして、この周辺では県庁舎・市庁舎周辺整備計画や中心市街地活性化基本計画、TMO構想など関連する計画もありますが、厳しい経済状況や財政状況等から、具体的な計画や動きは見えてこない状況でございます。しかし、この街区の一部に民間のマンション建設の動きもありますので、こうした動きも踏まえ、今後中心市街地の活性化に寄与できる計画があれば官民を問わず対応してまいりたいと考えております。

 次に、中心市街地の中に公共施設の設置を検討する際に合併特例債の活用を考えるべきということでございますが、合併特例債を活用する要件といたしましては、新市建設計画に位置づけられている事業であり、また実際に合併特例債が適用されるかは新市の一体性を確立する事業、または新市の均衡ある発展のための事業という要件がございます。合併特例債は、既存の補助制度よりも財政面で大変有利でありますので、中心市街地に公共施設を検討する際には、施設の性質にもよりますが、新市の一体性を確立する事業という面から、活用を検討すべき課題であると考えております。

【2番(中島資浩議員)】 ありがとうございました。時間的な制約もありますので、最後に近代化遺産についてのみ要望させていただきます。

 前橋の生んだ偉大な現代詩人の一人である伊藤信吉氏は、生前れんがの遺構を全国有数の生糸のまち、製糸のまちであった遠い前橋をしのばせる唯一のものとしてこよなく愛し、たびたびそれらを訪ねて歩き、一つ、また一つとなくなっていくのを目の当たりにして、大事なものをとられたような空白感を覚えたと氏の著書、上州の空の下の中で記しています。氏は、れんがの遺構に近代日本発展史の産業的郷愁としての価値を見出していたようです。さらに、氏は製糸によって経済が成り立ち、まちが発展してきた前橋かられんが倉庫が一つ残らず消滅していいものかとも記しています。

 一方、歴史を刻むまちづくり、すなわち古きよきものを残し、後世に伝えていく取り組みがそのまちの魅力や個性の醸成につながり、今後まちづくりにおいて大変重要かつ不可欠の要素となると考えます。本市の赤れんが建築物の象徴とも言える上毛倉庫は、本市を紹介するパンフレットにも掲載されております。もはや一個人や一企業の所有物であるという事実を超越し、前橋市民共有の財産であると言っても過言ではありません。しかし、いまだ国登録有形文化財の指定も受けていないようであります。また、1984年に取り壊された旧前橋駅舎は、現在国登録有形文化財に指定されている群馬県庁昭和庁舎より1年、群馬会館より3年前の1927年の完成とされており、およそ70年間に及ぼうとする長い間、市民に親しまれてきました。また、建築デザイン的にも大変すぐれたものとされています。こういった貴重な近代化遺産に思いを寄せ、今残っていればと惜しむ市民が大変多いと伺います。一度壊されてしまえば取り返しはつかないのです。

 今後同じようなことを二度と繰り返さないためにも、今行政として近代化遺産の保存に向けた筋道をつくっていく必要があると思われます。個人の力だけでは、近代化遺産の維持管理にも限界があります。近代化遺産を文化財としての価値だけでなく、景観上や歴史的な視点等、あらゆる観点からその価値を検証し、それがたとえ個人の所有物であったとしても、前橋市民共有の財産としての価値が見出せたものについては後世に伝えるべく、財政的に大変厳しいときでありますが、行政としても何らかの支援体制を整えていきますよう強く要望させていただきまして、すべての質問を終わります。ありがとうございました。 戻る